サッカーがしたくてイギリスに行った伊織でしたが、Bedstone Collegeは、サッカーよりもラグビーに力を入れていることは、伊織の入学後、少ししてからわかりました。日本のクラブ活動のように、一つのクラブに所属するのではなく、その週末にある大会に生徒の中から選手が招集されて、当日の朝、みんなでバスに乗って出かけて行くようでした。伊織は初めのうち、まだ言葉が分からず、その日の競技が何の種目なのか、会場に行って初めてわかる、という事もあったと言っていました。サッカーの試合に行くことは少なく、陸上競技やラグビーの大会では、勝ち進むと学校を上げて盛り上がったので、伊織はそのうち観念して、その時、目の前にやってくる競技に力を入れて取り組むようになっていきました。Bedstoneで、人気のないサッカー(イギリスではフットボール)をやるよりも、ラグビーの試合で活躍した方が、先生やクラスメイトから喜ばれるし、そういうコミュニケーションを大事にする伊織がサッカーからラグビーに鞍替えするのはそれほど難しくなかったようでした。日本に居ても体が小さい方だったので、3倍くらいの体の大きさの選手に吹っ飛ばされて、何度か医務室に運ばれたという話も聞きました。私は心配性なので、日本から毎週、寮の公衆電話に電話を掛け、伊織と話をすることを試みました。伊織たちが夕食を終える時間を狙って電話を掛け、運よく男子の生徒が出た時には「Can I talk to Iori?」と言ってみました。電話に出るのはたいてい低学年の男子で、受話器を置いたまま、「iori~~」と走りながら呼ぶ声が聞こえましたが、まだ国際電話が高額な時代、なかなかの苦労でした。Bedstoneに入学してから、8か月後に伊織が最初の帰国をするまで、私は伊織の様子を、この電話と、担当の先生や週末の受け入れ先のガーディアンさんとのメールのやり取りで知ることになります。
~~~次回は伊織の英語の上達のお話