Bedstoneのサイモンズ学長に初めて会ったのは、伊織の体験入学の時でした。大きな身体に顎には立派なお鬚をたくわえていて、よくサンタクロースの写真で見るような感じでした。イギリスの学校だけあって、Bedstoneの校舎は規模が10分の一くらいのハリーポッターに出てくるホグワーツのような雰囲気でした。校舎に入るまでの石畳を歩いて行くときには、ディズニーランドの始めてのアトラクションに入っていくような気持ちで、わくわくしてしまったのは伊織よりももむしろ私のほうだったかも知れません。秘書室で待った後、学長室に案内され、サイモンズ学長との面談でしたが、伊織は練習した英語をなんとか無事に言うことが出来ました。サイモンズ学長との会話の内容は、今はもう忘れてしまいましたが、、私は緊張して、秘書の方が出してくださった紅茶にミルクを入れようとして、一滴テーブルの上にこぼしてしまうと、サイモンズ学長は、自分のポケットからハンカチを出して、すかさずそれを拭きとってしましました。まさに大きくて優しいイギリス紳士でした。伊織の在学中、何度かサイモンズさんに直接メールをしたことがありました。その中で、私は伊織の陸上競技に関することを書いたことがありましたが、それは、伊織は800メートルの競技で、毎回後半失速して順位を落としてしまうので、このことをコーチはどんなふうに指導しているのか、なんて馬鹿なことを聞く内容でした。今思うと私はメールの話の内容を充実させるために、無理やり書いた内容でした。もちろんサイモンズさんからのお返事のメールには、それを伊織本人に考えさせるために競技に参加させているのです、と、書かれていました。サイモンズ学長は、生徒たちにとっては威厳のある怖い存在でした。結局私はサイモンズさんには全部で3回お会いすることが出来ました。サイモンズさんが生徒集めのために来日した時も、伊織の卒業式に私が招待された時も、いつもサンタクロースのようで、やさしくにこにことほほ笑んでいる方でした。